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    脳動静脈奇形




  • 【要点】

     脳動静脈奇形は脳実質内に発生し、本来あるはずの動脈と静脈を繋ぐ毛細血管がないために動脈の血流がそのまま静脈へ流れてしまい、その動脈と静脈の吻合部に異常血管の集合体(ナイダス)を形成する病気です。
     原因は不明ですが、胎生期(生まれる前)に発生すると考えられています。
     20~40歳で症状を認めることが多く、ナイダスから出血(脳出血・くも膜下出血)することで診断されることが多いです。
     ナイダスは時間経過とともに大きくなります。
     出血を起さずに痙攣発作(一時的な意識消失や手足の麻痺、失語症)や頭痛、精神症状、心不全などで診断されることもあります。
     治療は出血を予防するために行います。摘出術や血管内治療による塞栓術、放射線治療(ガンマナイフ)を適宜組み合わせて治療を行います。


    動脈(赤)と静脈(青)がナイダス(黄)を介して繋がっていることがわかります。




    【代表的な症状】

    [ 出血 ]
     初発症状の60%を占め、死亡率は10~30%、生存者の10~20%に後遺症があると報告されています。
     出血を起こしていない状態で発見された場合の初回出血率は2%/年、出血を起こした状態で発見された場合の再出血率は18%と報告されています。

    [ けいれん ]
     初発症状の20%を占め、大きなナイダスであればあるほど発症リスクは高くなります。



    【治療の必要性について】

     出血を生じることで死に至ること、また死に至らなくとも不可逆的な脳組織の損傷が生じるため後遺症が高率で残るため、出血を予防することが重要です。
     確実な出血の予防方法は摘出術ですが、発見されたときには既に非常に大きく、摘出術を行うことでかえって後遺症が生じるなどリスクの高いことも少なくありません。
     そのため、病変の大きさや位置、血行動態を評価して摘出術のメリットと伴うリスクを検討します。
     摘出術が困難な場合は、血管内治療による塞栓術や放射線治療(ガンマナイフ)を単独または併用し治療を行います。



    【治療方法】

     病状(主に神経症状)や病変の性状(大きさ、位置、血行動態)、年齢や出血の有無など、総合的に評価し、適した治療方法をお伝えいたします。

    ①摘出術
     一般的には、ナイダスが小さい、発生部位が重要な機能を有する部位ではない、神経症状が悪化している、出血を起こしている、などが手術を推奨する状態と考えられています。
     ただし、手術の適応については、患者さんごとに病状や状況も異なるため治療のメリットと伴うリスクをお話しし、決定することになります。

    ②血管内治療(塞栓術)
     一般的に塞栓術のみでは根治は困難であり、あくまで支援的な手段と考えられています。
     塞栓術による完全閉塞率は6~40%、1年内の再開通率は12%と報告されています。  塞栓術を行うことで、ナイダスの大きさを縮小させ、摘出術の際に周囲の組織から剥離を容易にし、出血を少なくでき、手術時間の短縮や安全性向上につながります。

    ③放射線治療(ガンマナイフ)
     ナイダスが3cm以下または体積が10㏄程度以下のものが適応とされています。
     摘出術では高率に合併症が生じると考えられる場合に選択することが多い治療です。
     放射線治療のみで完全閉塞することもありますが、完全閉塞までの期間として2~3年程要します。
     また放射線治療特有の合併症(神経細胞が放射線によって壊死したり、嚢胞という袋を形成すること)が10%程度の頻度で生じると報告され、特に若年者の場合は治療後の経過も必然的に長くなるため注意を要します。


    「手術前」の向かって左側の黒いモヤモヤがナイダスです。
    「手術後」ではナイダスが消失していることがわかります。