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    神経膠腫




  •  神経膠腫(グリオーマ)は細かく分類すると10種類以上ありますが、ここではその中でも代表的なものについてお話します。


    【要点】

     神経膠腫は脳・脊髄を構成しているグリア細胞(膠細胞)が腫瘍化したもので、グリオーマと呼ばれています。
     脳腫瘍全体の25~30%程度を占め、40歳代以上の中高年齢で、男性にやや多く認められる病気です。
     通常は脳実質内に発生して脳組織内を浸潤しながら増大していきます。
     脳腫瘍はその組織によって、グレード1~4の悪性度に分類されます(数字が大きい方が悪い組織像を示しています)。ほとんどのグリオーマはグレード2~4に属しており悪性腫瘍とされています。そのためグリオーマと診断された場合、その後の治療方針等を検査結果を下に十分に検討する必要があります。
     代表的なグリオーマについては、下記のようなものがあります。

     ・びまん性星細胞腫(グレード2)
     ・退形成性星細胞腫(グレード3)
     ・乏突起膠腫(グレード2)
     ・退形成性乏突起膠腫(グレード3)
     ・神経膠芽腫(グレード4)



    【症状】

     症状は腫瘍が発生・増大した部位によって異なり、腫瘍が小さいうちから手足の麻痺が出現することもあれば、腫瘍が大きくなっても軽い頭痛程度しか認めないこともあります。また症状の進行する速さも、脳腫瘍の組織(悪性度)によって変わってきます。

     代表的な症状は次のようなものが挙げられます。
     ①片方の手足の麻痺症状(多くは軽症で発見されます。)
     ②視力・視野障害
     ③けいれん発作
     ④精神症状・認知症様症状
     ⑤複視(物が二重に見える症状です)
     ⑥その他(嗅覚障害、聴力障害、顔面神経麻痺)



    【検査】

     頭部CTあるいはMRI検査で、腫瘍あるいは周囲の脳の浮腫みといった異常所見を認めて、発見されることがほとんどです。
     グリオーマが疑われると、造影剤を使用したCTあるいはMRI検査や、脳血管撮影、核医学検査等の検査を行います。また悪性度の高いグリオーマの画像所見は、転移性脳腫瘍や脳膿瘍など他の疾患と似ていることがあるため、全身のCT検査等で他に腫瘍がないことを確認します。
     脳腫瘍は病理組織検査(実際に腫瘍を摘出して腫瘍組織を精密に調べる検査)によって確定診断が行われます。
     画像検査のみでは正確な診断は不可能であり、増大する腫瘍の場合は悪性の可能性も考える必要があります。



    【治療方法】

     グリオーマに対して、①外科的摘出術、②放射線療法、③化学療法の治療方法があります。
     腫瘍の種類や悪性度、発生部位、患者さんの状態など、総合的に検討しこれらの治療を組み合わせて治療を行います(集学的治療と呼びます)。

    ①摘出術
     グリオーマの治療の中で、最も重要な治療法です。可能な限り腫瘍を摘出して、完治あるいは神経症状の改善を目指します。また腫瘍組織を摘出し、病理検査・遺伝子検査を行うことで確定診断が得られます。
     ただし、グリオーマは腫瘍細胞が脳組織に浸潤して大きくなるため、摘出することで正常に働いている神経細胞・線維を破壊し、術後に麻痺や意識障害などの後遺症が生じる危険性があります。また画像検査では正常組織と腫瘍の境界が明瞭であっても、実際に摘出を行うと、その境界が分からないことが多々あります。
     術後に後遺症が出現しない、あるいは生活に耐えられる範囲で、可能な限り摘出することが重要となります。
     そのため術中に次に挙げるような様々なモダリティーを使用し、安全な治療を心がけております。

    [ ナビゲーションシステム ]
     腫瘍と正常脳組織の境界が肉眼的に不明瞭なものに対して、ナビゲーションシステムを用いることで境界を決めることができます。
    [ 5-アミノレブリン酸(5-ALA) ]
     手術中に特殊な光を腫瘍に当てることで腫瘍だけ光らせることができ、腫瘍と正常脳組織の境界が明瞭となり、摘出率を向上させます。
    [ 電気生理学的モニタリング(神経モニタリング) ]
     脳に微弱な電気刺激を与えることで、全身麻酔下であっても手足の麻痺等が出現していないかを確認できます。
    [ 覚醒下手術 ]
     腫瘍が言語機能を司る部位にあれば、覚醒下手術を行い摘出を行いながら言語機能が損なわれていないか、確認しながら摘出を行います。

     詳細は 覚醒下手術 のページをご参照ください.

     腫瘍の全摘出が困難な場合には、診断の確定を目的として腫瘍の一部を摘出する生検術を行うこともあります。

    ②放射線療法
     腫瘍を摘出した後に、摘出部位とその周囲に放射線を照射することで、再発の防止、または摘出の不可能であった残存部の急速な増大を防ぐことを目的として行います。特に悪性度の高い(グレード3、4)場合には、腫瘍の摘出後にテモゾロミドの投薬と放射線治療を並行して行うことで、腫瘍の増大を抑える効果が期待できます。
     一般的に行われる放射線治療は1カ月半程度の期間を要します。
     腫瘍やその周囲に強く照射を行うため、頭髪の脱毛や皮膚の炎症(発赤やヒリヒリ感)などが一時的に出現することがあります。
     また放射線治療を行うことで周囲の正常な脳組織が損傷を受け、認知症などが生じることがあります。

    ③化学療法
     最も代表的なものがテモゾロミドです。摘出術や生検術を行い診断が確定した後に、体重に応じて決められた量のテモゾロミドを42日間内服します。この間は放射線照射と併用することも多いため、2カ月前後は入院が必要になります。退院後は定期的に外来を受診して頂き、ひと月に5日間のテモゾロミドの内服を継続頂くことになります。
     また放射線治療後やテモゾロミドによる加療中に腫瘍が再増大してきた場合は、ベバシズマブの点滴投与による化学療法を行います。さらに摘出術中の迅速病理診断でグレード3あるいは4のグリオーマと診断された場合は、腫瘍の摘出腔にBCNUウェハーという抗がん剤を染み込ませた薬剤を置いてくることで、術後に早期再発を予防することもあります。

    ④その他
     オプチューンという頭皮上に電極パッドを当てて腫瘍細胞の増大を予防する治療方法が2018年より保険認可されました。
     ただ患者さんの状態等によって、この治療を出来る方は限られているのが現状です。

     腫瘍が非常に小さくて悪性度が高くないと考えられる場合は経過観察を行い、定期的なCTまたはMRI検査によるフォローを行います。