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    脳深部刺激療法




  •  2016年4月に山陰唯一となる脳深部刺激療法「DBS(ディー・ビー・エス)」を導入しました。DBS治療対象は難治性の不随意運動症で、保険適応として本態性振戦やジストニアなどがありますが、主要疾患はパーキンソン病です。難治性神経変性疾患であるパーキンソン病は、原因不明の進行性疾患です。中脳黒質細胞が脱落して、振戦、無動、固縮、姿勢反射異常を主な症状とし、これらの運動症状に対してDBS治療が施行されます。パーキンソン病に対するDBSの機序を図1と図2に説明致します。


    図1:アレキサンダーの仮説図
    パーキンソン病では中脳黒質の脱落で、黒質からの被殻の興奮系(直接路)が減少し、被殻から淡蒼球内節への抑制系が低下する。さらに黒質から被殻の抑制系(間接路)が減少し、被殻から淡蒼球外節への抑制系が増加し淡蒼球外節が抑制され、淡蒼球外節から視床下核への抑制が減少するために、視床下核の活動が高まる。過活動な視床下核から淡蒼球内節へ刺激が増加する。以上より、淡蒼球内節では直接路の抑制が減り、間接路の刺激が増加して、淡蒼球内節の活動が高まる。その結果、淡蒼球内節から視床への抑制系が強くなって、視床から大脳皮質への刺激が減少するために、パーキンソン病の運動障害が発生するとされる。

    図2:仮説図でのDBSの機序
    このアレキサンダーの仮説図からDBSの機序は説明される。DBSでは、視床下核「STN(エス・ティー・エヌ)」または淡蒼球内節「GPi(ジー・ピー・アイ)」を電気刺激して、過活動になった神経活動を機能的にブロックすることで、運動障害を調整するとされている。

     DBSの手術手技について、手術前には必ず精度管理(写真1)と術前プランニング(写真2)を行い、ナビゲーションと術中の微小電極記録(写真3,写真4)をもとにして、5mmサイズの視床下核を同定します。そして電極針の位置がずれないように術中透視でモニターしながら、DBSリード電極を留置します(写真6)。通常は、局所麻酔でリード電極留置術を行いますが、術中せん妄が予想される場合には全身麻酔で行います。


    写真1:精度管理
    手術前に電極とターゲットのズレを確認している。


    写真2:術前プランニング
    手術前に造影MRIを撮影して、血管構造をチェックして、穿刺ルートを同定している。


    写真3:微小電極挿入用のドライバー装置
    術中の様子で、ターゲットの15mm前から微小駆動で電極を挿入している。


    写真4:微小電極の電位記録表
    術中のモニターでステップ毎に細胞の電気活動を記録して、神経核を同定している。


    写真5:術中透視の様子
    術中ではレントゲン透視を行い、電極を挿入している。


    写真6;透視でのDBSリード電極の最終確認
    目標とする神経核に左右2本の電極を挿入している。



     DBSの適応条件として、パーキンソン病の確実な診断とL-ドーパの反応性があることが必要です。さらに、パーキンソン病の指定難病受給者証を受けておくことが有利で、難病指定の条件はヤール3度以上かつ生活機能障害度2度以上から申請が可能となり、難病指定でDBS治療の公費負担が実現されます。手術禁忌として高度の認知機能障害および自殺企図の可能性があるうつ病があげられます。また75歳以上の高齢者、脳萎縮が強い場合、水頭症や脳室拡大、ルート近辺の脳腫瘍、他の刺激発生装置が留置されているものおよび出血傾向のある場合には慎重適応となります。

     手術合併症として出血や感染があり、構語障害、認知機能低下、うつ、感情鈍麻などのパーキンソン病に特有の問題も起こりえますが、進行期のパーキンソン病で薬剤抵抗性の運動機能を改善するためには唯一の治療方法とされています。